はじめに
今回はNuPhy Air75 V3のレビューです。
NuPhyのキーボードはAir75(初代)を購入しましたが、耐久性とソフトウェアに難ありでした。その後改良版のV2が出て、その後継機種が今回購入したV3です。V3では日本語配列もラインナップに加わりましたので、日本語配列を選んでみました。
キースイッチはBlush nanoという静音軸です。
まずまとめ
- 打鍵感がコトコトと気持ちいい。
- キースイッチBlush nanoの打鍵音は恐ろしいほど静か
- ガスケットマウント構造のおかげか、ロープロファイルにしては底打ち感が優しめ
- 右上のキーをロータリーノブに交換できる。通常のキーのままにも出来る。
- キー配列変更ツールNuphy IOが良く出来ている。そして開発が継続されていて安心。
- エンターの右に隙間がないタイプの75%配列は人を選ぶ
使用環境(ファームウェアバージョン)
Windows 11 Pro 24H2
NuPhy Air75 V3 Jis ファームウェア 1.0.7.6
NuPhy IO V2.1.2
特徴
- 技適取得済み(代理店オンラインショップDIGIART購入品は本体にマークあり)
初期にメーカーから直接買ったものには本体にマークが無いようです。 - 右上のキーをロータリーノブに交換する事ができる。
- NuPhy IOでキーマップ変更が可能。
- 新型ロープロファイルキースイッチ採用
サイズ・重量
長さ:318.9 mm
横幅:128.9mm
高さ :13.2mm
重量:724g (実測:746g)
引用元:【新発売】Air75 V3 ワイヤレスメカニカルキーボード – DIGIART
付属品
USB-C to USB-C接続ケーブル
ノーマルプロファイルノブモジュール
ロープロファイルノブモジュール
JIS:6 x 追加キーキャップ
2.4G レシーバー
スクリュードライバー
キーキャップ/スイッチプラー
ユーザーマニュアル/FAQ

接続方式
- Bluetooth5.0 3台
- 2.4GHz
- USB-C有線
技適マーク

郵便マークのような技適マークはここにあります。発売開始前に提供を受けているレビュアーや、レビュー用に早く欲しくてメーカー(NuPhy公式)から予約購入した場合はマークが無いそうです。YouTubeの提供されているレビュアーは正直に無いと言っている人がいます。そういった人たちのマーク無しが中古で出回りますので注意が必要でしょう。
キースイッチ
NuPhy Gateron Low-profile 3.0 Switchesを採用。少しキーストロークが深いようです。
他のロープロファイルキースイッチと互換性はありません。
Red nano | Brown nano | Blush nano | |
---|---|---|---|
Operating force | 45±15 gf | 50±15 gf | 42±15 gf |
End force | 60±15 gf | 65±15 gf | 55±15 gf |
Pre travel | 1.7±0.4 mm | 1.7±0.4 mm | 1.7±0.4 mm |
Total travel | 3.5mm Max | 3.5mm Max | 3.2mm±0.2mm |
Stem | POM | POM | POM |
Top housing | POM | POM | PC |
Bottom housing | POM | POM | PA66 |
Spring | 16.5mm Single-stage | 16.5mm Single-stage | 16.5mm Double-stage |
引用元:【新発売】Air75 V3 ワイヤレスメカニカルキーボード – DIGIART
打鍵感
コトコト系です。打鍵音ではなくて打鍵感がコトコトしているように感じます。
打鍵音
コトコトとコロコロの中間。しっとりとした静かな打鍵音。
スペースキーとエンターキーの上半分の打鍵音が他のキーと比べるとやや大きい音がします。他のキーが静音なので、エンターキー上半分とスペースキーのタンタンという感じが統一感を損なっていると感じます。それでも音量はとても静かです。エンターキーは優しく叩けば多少マシになります。
スイッチ音が筐体中で反響しているようには聞こえず、打鍵の振動で筐体が音を出すこともありません。

スリープ
Bluetooth接続時のスリープにはレベル1スリープとレベル2スリープがあります。
レベル1はLEDバックライトがOFF。
レベル2スリープはLEDバックライトとBluetoothがOFFになります。
つまり、RED消灯イコールBluetooth切断ではありません。
それぞれ最短の設定時間は5分です。
レベル1スリープになってからレベル2スリープに入るカウントダウンが開始される仕様です。
例えば、5分でレベル1スリープ。30分でレベル2スリープに入る設定をした場合、放置してから35分後にBluetoothが切断されます。5分でレベル1スリープ。5分でレベル2スリープに入る設定の場合は、放置してから10分でBluetoothが切断されます。
NuPhy IO 2.0を使って設定時間を変更する時に、変更が適用されないことがあります。ケーブルを指し直すと変更前の設定時間のままになっている事があります。おそらく数字を変更した直後には本体に書き込まれず、他の項目をマウスクリックしたタイミングで適用されているような感じに見えます。NuPhy IO 2.0んぼバージョンアップで仕様変更されるかもしれません。
スリープ解除
WindowsPC(OSはWindows 11)がスリープに入っていないのが前提。
V3がスリープしていて、そのスリープ解除時の入力を取りこぼしません。
ただしアプリとキーの種類によっては取りこぼします。
取りこぼす、取りこぼさないとは
- Air75 V3のBluetooth接続が切れるまで放置する。
- マウス操作でメモ帳を起動して、入力された文字は全部メモ帳上に反映されるようにフォーカスを当てておく。
- スリープしているV3のキーをasdfghjklと打っていくと、メモ帳にasdfghjklと入力さた。
他のキーボードでよくあるのは、asdfghjklと打った場合にdfghjklと入力されるパターンです。最初のaでスリープ解除されて、sを打ったときはBluetooth接続が完了しておらずsは取りこぼし、dfghjklが入力される。このパターンがほとんどです。
これはどのアプリに入力するかも関係します。ブラウザでYouTube動画を再生して動画画面にフォーカスを当てておく。スリープ中のV3のスペースが打たれれば再生(一時停止)になるはずですが無反応です。スペースではなく「J」「L」なら取りこぼさずに10秒巻き戻し(10秒送り)されます。
アプリとキーの種類によっては取りこぼす例です。
ごく一部の人が気にしているので書いていますが、これを理由に買う買わないが入れ替わるほどのことではないと思います。どのアプリにどんなキーを送信するかにも影響される内容ですから。
バッテリー駆動時間
バッテリー容量:4000mAh
動作時間(すべてのライトがオン):約60~100時間(ラボテスト結果)
動作時間(すべてのライトがオフ):約1200時間(ラボテスト結果)
引用元:【新発売】Air75 V3 ワイヤレスメカニカルキーボード – DIGIART

NuPhy IO 2.0
インターフェイスを日本語に変更できます。日本語にすればだいたい見れば分かることばかりです。WindowsモードがFn4からFn7。MacモードがFn0からFn3。それぞれ4レイヤーです。
「Tap Dance(多機能クリック)」機能を使って、単押しに変換(または無変換)、長押しにAltを割り当てる
VIAで言うところのMod-Tap機能です。下の画像は「KANA」に短押しで「変換」、長押しで「Alt」を割り当てている画像です。「変換」にはIME上の設定で日本語入力ONを割り当てています。
この機能を使えば「変換」「無変換」に短押しで「変換」「無変換」。長押しで「Fn6」「Fn7」を割り当てることもできそうです。

- 「高度なキー」タブの「多機能クリック」を選択
- 画面上半分の「KANA」をクリックすると「+新しいキーを作成」がクリックできるようになるのでクリック。
- 1回押しのところに、右下のキー一覧から「変換」を割り当てる。
- 同様に長押しのところに「ALT」を割り当てる。
- これで「KANA」が短押しで「変換」、長押しで「Alt」になった。
過去記事:【Google日本語入力】変換・無変換キーにIMEのON・OFFを割り当てる方法【半角/全角キー使いません】
トグルキー・SOCD
この2つの機能はただいま色々試しているところです。
トグルキーの持続的にオンオフというのは、Fnキーをトグル設定しておくと一度押すだけでFnキーが押しぱなし状態を作れるようになる機能と思います。
SOCDというのは上下、左右のようなペアになる反対方向のキーを設定しておいて、左を入力しっぱなしにしている時に右を入力した場合の処理の仕方を設定出来るようです。ゲームでWASDに上下左右が設定されていて、Aを押しながら後からDを押した場合に、「常にAが優先」「常にDが優先」という設定ができるようです。
不具合
日本語配列版のNuPhy IO2.0ではキー名と実際のキーが一致しない箇所があります。
- 画面の上半分にあるキーボードの画像の中。左下「Alt」「Win」は「Win」「Alt」です。
- 画面の下半分にある、キーマップ設定の通常キー一覧。左下「Win」「Alt」は「Alt」「Win」です。

分からないこと
マウスキーのクリックを含むマクロの組み方
マクロを組むためには記録開始ボタン(録画開始ボタンのようなもの)を押してから実際にキー操作をして、記録停止ボタンを押して完了です。実際に操作をする場面でマウスを右クリックしても一切記録されませんでした。
「shift+右クリック」を1つのキーに割り当てたいのですが困っています。
【追記】
出来ました。一旦どこかのキーに「右クリック」を割り当ててから、キー操作の記録を取れば良いようです。
ショートカットの割り当て方(マクロを使わないと出来ないのか?)
Fnレイヤー上の「T」に「Ctrl+Shift+T」を割り当てるようなことをしたいわけです。しかしやり方が分かりません。
マクロ機能でCtrl+Shift+Tを記録してFnレイヤー上の「T」に割り当てることで同等のことが出来ますが、マクロは設定が難しいです。
マクロ機能を使わないショートカットの割り当てが、出来ないわけがないと思うのですが、やり方が分かりません。
英語配列V3で短押し長押しによる日本語入力のON、OFFが出来るのか?
Mod-Tapと同様の機能が用意されています。単押しで日本語入力ON(OFF)になり、長押しではAltになるような機能です。
しかし、英語配列版V3で日本語入力ON(OFF)に対応するキーが存在するのか不明です。KC_HAEN、KC_HANJに相当するキーが、NuPhy IO2.0に有るのか無いのか不明ということです。
VIAではOSがUS配列として認識しているキーボードに日本語配列特有のキーを設定しても使えないから、韓国語の切り替えであるKC_HAEN、KC_HANJを使っています。英語配列V3に変換・無変換を割り当て可能に見えても、VIAと同じように機能しないかもしれません。
日本語配列では「Tap Dance」機能を使って、単押しに変換(または無変換)、長押しにAltを割り当てて動作することは確認できました。

良い点
- 打鍵感が気持ちいい
- Blush nanoの静音かつコトコト打鍵感は癖になる
- ガスケットマウント構造のおかげか、ロープロファイルにしては底打ち感が優しめ
- スリープ解除時の入力を取りこぼさない(スリープ解除の項目参照)
- 右上のキーをノブに交換できる。通常のキーのままにも出来る。
- WinモードとMacモードが有り、それぞれ4つのレイヤーがある
- NuPhy IOがインターフェイスを日本語表示にできるので分かりやすい。
- 短く押すと日本語入力ON(OFF)。長押しで「Alt」といったMod-Tapのような割り当ても可能
- US配列版でこれが出来るかどうかは未確認
イマイチな点
- スペースとエンターの打鍵音が他のキーより大きい
- 重い
- エンターキーとエンターの右側にある1列のキーたちが分離していない。Shiftが右端にあることになれていると、Endを押してしまう。
- 右Shiftが小さい。「~なのか?」のように最後に?を打とうとして上矢印を打ってしまう。
- 使えるキースイッチがNuPhy Gateron Low-profile 3.0 Switchesだけのようである。Air V1,V2,HEシリーズのスイッチとは互換性がない。
スペースとエンターの打鍵音が他のキーより大きい
詳しくは打鍵音の項目を御覧ください。スイッチがBlush nanoなので他のキーが異様に静かです。エンターとスペースは普通の静音という感じです。その差を感じます。
重い
Air75 V2は598g。V3は724g。持ち出すからロープロファイルキーボードを選ぶユーザーも居ると思いますが重いです。
MX Keys Miniは506.4g(引用元公式ページ)です。静音、持ち出す、薄型、キー配列を変更しないのであればMX Keys Miniも選択肢にいれると良いと思います。
エンターキーとエンターの右側にある1列のキーたちが分離していない。
カーソルキーを打とうとしてEndを打つ。BackSpaceのつもりでPgUpということがあります。
ただし、エンターのつもりでPgUp、Homeを打つことは私はありませんでした。
英語配列のキーボードも使っていると、エンターはもっと左まで伸びているものだと体で覚えています。なので日本語配列のV3を使うときにはエンターキーの左端を打っています。わざわざエンターの右にあるHOME、PGDNを誤爆するほど指が右まで伸びません。
これは英語配列も使っている私の癖なので、エンターのつもりでHOMEを打ってしまうかもしれません。
この右端一列が分離していないタイプの75%配列キーボードは慣れる時間は必要です。

右Shiftが右端にあることになれていると、Endを押してしまう。
視界の端でキーボードの右端を捉えて、右Shiftを打つつもりでEndを打つことが多いです。HHKBの日本語配列では右カーソルの上がShiftなので、それに慣れているからだと思います。
カーソルを基準に右Shiftを探すとミスります。「右Shift+カーソル」で文字の選択範囲を広げるときのような操作の時に「End+カーソル」になってしまっています。


右Shiftが小さい。「~なのか?」のように最後に?を打とうとして上矢印を打ってしまう。
「?」と「右Shift」の間には2つのキーが有ると体で覚えているので、これもよくミスっています。

日本語配列か英語配列 どっちを選ぶ?
私は「NuPhyの日本語配列」を使ってみたくてV3は日本語配列を選びました。しかし、英語配列にしておけばよかったと思っています。小さな右Shiftには困っています。
使用期間が短いので結論づけるのは早いですが、日本語配列、英語配列で迷っている人は英語配列のほうが良いかもしれません。75%配列になるようにキーを縮小する時に、無理をしていないのが英語配列です。
Air75 初代からV3へ移行してどう感じた?
V2は持っていませんので、初代とV3を比べてみます。
初代はただのロープロファイルキーボードです。出来ること出来ないこと、筐体やキーキャップの質感、打鍵感打鍵音も発売当初の1万数千円のクオリティです。V3はそれとは別格です。
初代を使っていて配列に問題を感じず、予算の都合がつくなら早くV3を買ったほうが良いです。V3は重量が重い。キーストロークがロープロファイルにしては深い。キースイッチが従来品と互換性がない。この3点は注意事項です。

どんな人にオススメ?
オススメできる人
- コトコトと表現される打鍵感を求める人
- 静音メカニカルキーボードが欲しい人
- ガスケットマウント構造のロープロファイルキーボードが欲しい人
- Air75初代を愛用していて、キー配列変更と打鍵感の向上を求める人
オススメ出来ない人
- 毎日持ち出す人
- 浅いキーストロークを好む人
- 従来のキースイッチを使いたい人
- 機能・質感より安さを求める人
さいごに
AIr75初代は人にはオススメできない内容でしたが、V3は今のところオススメです。というのも、初代は耐久性に難ありだったのです。V3は発売されたばかりですから、1年後の劣化具合は不明です。
耐久性に問題無しと仮定したうえで注意してほしいのは、このタイプの75%配列自体が人を選ぶということです。右端1列のキーがエンターキーから分離していない無いタイプはタイプミスは起こります。日本語配列版は、やや無理をして75%サイズにまとめており、右Shiftが小さのも注意点です。
この配列である以上は「最高傑作」「激推し決定!」にはなれないのです。買ってから使いにくいと感じる人は絶対に出てきます。
この配列にさえ問題ないようであれば、質の高いキーボードなので予算が許すならチャレンジしてもらいたいです。安っぽさがなく、キーカスタマイズの自由度が高く、打鍵感も良い。特にこの打鍵感は過去最高かもしれません。
リンク
NuPhy.com NuPhy Air75 V3
DIGIART 【新発売】Air75 V3 ワイヤレスメカニカルキーボード – DIGIART
DIGIART Nuphyの定番製品を体験できる店舗 店舗情報 – DIGIART
