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はじめに

 今回紹介するのは、QDCのイヤホンFRONTIERです。ドライバーはバランスド・アーマチュアドライバが片側に1基だけの1BA。それにもかかわらず「1BAとは思えないくらい、しっかり低音が出ている」「1BAでサブベースの低いところまでしっかりと出してくる」などと言われて注目されていたイヤホンです。本当なのか気になって仕方がなくて買ってしまいました。

結論

  • 音質についての前評判はやや大げさではあるが間違いではない。
  • 高音域から低音域まで出ていて、繊細で解像度高くさっぱりした音色。
  • 昔の1BAよりは明らかに低音が出ている
  • ボーカルが近い。
  • 女性ボーカルが得意
  • DAC、DAP、ケーブルの影響を受けやすい

再生環境

PC(iPad Pro 11 M1) + HIDIZS DH80S ポータブルアンプ + 純正3.5mmアンバランスケーブル
HIDIZS DH80Sの代わりにFiio BTR13をUSB DACとして使うこともあります。

特徴

  • 【Head to the new edge】新たな最先端の道を切り開くBAシングルフルレンジIEM

<リアキャビティ・マイクロホール> FRONTIERはqdc独自キャビティ構造を採用しており、使用しているカスタマイズドBAドライバーは背面に小さな排圧穴が開いています。「リアキャビティ・マイクロホール」と名付けたその構造は、そのBAドライバーのリアホールから内部のキャビティを通して感度と低域の調整を行っています。BAドライバーの背面からシェル背面までキャビティが作られており、そしてシェル背面にもマイクロホールが開いています。これによって、ハイインピーダンスでノイズを抑えつつも感度を強化して音量を取りやすくし、BAドライバーならではの高解像度サウンドに加えて、シングルBAドライバーの課題であった低域不足を自然な形で強化しています。

  • プロフェッショナルモニターチューニングと快適な装着性
  • L字モールドプラグを採用した高純度無酸素銅(OFC)4芯線ケーブル
  • 新フェイスプレートデザイン「トランスルーセント・ミラー・グラデーション」
  • qdcユニバーサルIEM初のフォームタイプイヤーピースと充実の付属品

引用元:FRONTIER|qdc|株式会社アユート PCパーツ・VR・オーディオ等周辺機器 総合代理店

仕様

ブランド製品名
QDCFRONTIER
ドライバー構成BA型(カスタマイズドBAシングルフルレンジ)
周波数応答範囲10Hz – 30,000 Hz
感度106 dB SPL/mW
インピーダンス52Ω
外音遮断26dB
ケーブル高純度無酸素銅4芯ケーブル(約120cm)※ブラックカラーPVC被膜使用
コネクタカスタムIEM 2pin(0.78mm)
プラグプラグ(L字モールド)3.5mm3極

引用元:FRONTIER|qdc|株式会社アユート PCパーツ・VR・オーディオ等周辺機器 総合代理店

開封

付属品

  • FRONTIER Cable 3.5mm3極アンバランス(L字)、フラットな2Pin
  • qdcTips Soft-fitシリコンイヤーピース:3ペア(S/M/L)
  • フォームタイプイヤーピース:3ペア(S/M/L)
  • ケーブルクリップ
  • クリーニングツール
  • オリジナルキャリングケース
箱の中身。
イヤホン本体とケーブルが装着された状態で、ポーチに入っていた。購入したのはEmerald
QDC FRONTIERのポーチの中身。
ポーチの中身はこんな感じ。ケーブルクリップとクリーニングツールも入っている。

本体

QDC FRONTIERのフェイスプレートは見る角度により変化する
QDC FRONTIERのフェイスプレートは見る角度により変化する。この角度ではフェイスプレート越しに中身が見える。
QDC FRONTIERのフェイスプレートは見る角度により変化する
QDC FRONTIERのフェイスプレートは見る角度により変化する。この角度でもフェイスプレート越しに中身が見える。
QDC FRONTIERのBAドライバが1つ見える。
QDC FRONTIERのBAドライバが1つ見える。
QDC FRONTIERのフェイスプレートは見る角度により変化する。
QDC FRONTIERのフェイスプレートは見る角度により変化する。黄色に見えたりオレンジに見えたり。
QDC FRONTIERのシェル
反対側は耳の形に合うような形状。トゥルンとした見た目。
QDC FRONTIERのBノズル。金属メッシュ。
QDC FRONTIERのノズル。金属メッシュ。

外観

フェイスプレートは角度によって見え方が変わります。
 ツルツル、テカテカ、ピカピカしている。金属の光沢でもなくレジンの光沢でもないように見える。安く見えないように工夫をしている印象。

 代理店や販売店の商品説明ページを見たときには、アクアマリンはオレンジにはならず、エメラルドは黄色にはならない。そう思ってエメラルドを選びました。実際は私の購入したエメラルドでも角度によって黄色にもオレンジにも見えます。エメラルドでも黄色に反射するのなら、アクアマリンもエメラルドもフェイスプレートは同質の物。
 ということは、アクアマリンとエメラルドの両方を買って、左右別色で組み合わせて楽しむのはあまり意味がないかもしれません。両方買っても、違う部分は装着すると見えなくなる部分だけです。

 角度によって見え方が変わるということは、写真写りやファッションとして自分を飾るアイテムとして使いたい場合には注意が必要です。角度が悪いと油でテカっているようにしか見えない角度もあります。見た目が不安定ということです。

イヤーピース

 装着感を良くするためのイヤーピース選びと、音質を好みに近づけるためのイヤーピース選びがあります。FRONTIERは装着感は良いので、音質面でイヤーピースを選ぶことになります。

 ちなみに、FRONTIERはシェルのノズル基部が突き出していて、そこからノズルが生えています。そのため耳の奥までイヤーピースが入ります。普段よりワンサイズ小さいイヤーピースでちょうど良い感じでした。普段はAZLA SednaEarfit Crystal 2 Standardか、SpinFit W1のMLサイズとMサイズを使っているので、MSサイズを追加購入しました。

 初めのはFinalのTYPE Eで使用していました。高音域の刺激が落ち着きます。サイズが私の耳にちょうどよく、密閉しやすく、結果として低域の密度が増すように感じました

 このイヤホンの高音域に慣れてきた後は、AZLA SednaEarfit Crystal 2 Standardに変えました。TYPE Eから変えた直後、高音が明るく伸びるようになったと感じました。全体的に空間が明るくなったように感じました。

 はじめは高音を抑えるイヤーピースを使っていても、慣れたら変えてみることをオススメします。

ケーブル

 3.5mmの純正ケーブルで試聴しています。FRONTIER専用の4.4mmバランスケールは発売されていません。qdc SUPERIOR用のQDC-SUPERIOR-CABLE44が販売されています。

装着感

 適切なイヤーピースを持っていれば、装着感はとてもいいです。私の場合は右耳がどう頑張ってもフィットしないことが多いのですが、FRONTIERは両耳ともピタッとハマります。

音質

全体の印象

繊細でスピード感のあるサウンド。

音場はやや狭い印象。
 音の出所が近く、曲によってはわずかに圧迫を感じもう少し遠くてもいいのにと感じることが有りました。これはバランス接続にすると程よい聞こえ方になるのかもしれません。

 定位は悪くありませんが、定位の良さを売りにするイヤホンではないと感じました。解像度高くクッキリした音を出す事で補っている感じです。補っていると言うか定位に意識を向けさせないと言った方が良いのかもしれません。

 人によっては刺さりそうな高音と厚みが薄い低域。こういった点はイヤーピースで変化を感じやすいと思います。シリコン製イヤーピースだと高音域が目立ちます。フォームタイプのイヤーピースだと高音の刺激が抑えられて、高音域から低音域までバランスが良くなります。

 イヤーピースを含めて他の機材の影響を感じやすいイヤホンと感じました。ということは、このイヤホンをとても高く評価している人は、Fiio K17クラスのDACやそれと同価格帯のDAPを使っているのかもしれないと思いました。

 FRONTIERはイヤホンのエージングより耳のエージング(リセット)が重要と思います。普段使っているイヤホンの音と違いが大きいほどFRONTIERの特徴が分かりますが、違いが大きすぎると「やっぱり1BAだからこの程度か」「解像度は高いけどBAだからコレくらいは当たり前」と感じてしまいます。

高音域

 硬質で伸びやかに鳴る高域。

 刺さるのが苦手な人は、硬質な金属音の部分でキツさを感じるかもしれません。フォームタイプのイヤーピースで緩和することになると思いますので、フォームタイプが肌に合わない人は手を出さないほうが良いイヤホンと思います。

 電子音をキリキリ鳴らす曲は大変得意です。

中音域

 スッキリと見晴らしが良い中域で、情報量が多くなっても、団子にならず分離して捉えることが出来ます。
 近い距離でボーカルを聞くことが出来ます。
 女性ボーカルが複数いるKalafinaのようなグループは、オケもボーカルも堪能できます。
 男性ボーカルは繊細に鳴ってしまって、もっと厚みが欲しい感じです。

低音域

 スッキリ、絞まった低音。

 何秒か鳴り続ける「ブゥオーン」とか「ズズズズッズズズズッ」という感じの低音は出ているのですが、瞬間的にドンッとくる単発の低音のアタックが弱く感じます。瞬間的な音の出方が弱いということは、電気の供給量が安定している据え置きDACを使えばマシになりそうな気もします。しかし、この点は1BAに求めるものでは無い気もします。

 鳴り続けるサブベース域は出てはいますが、厚みが物足りなく旨味がないと感じました。沈まないサブベースと感じます。そこはやっぱり「サブベースの深いところまでしっかり出してくる」というのは言い過ぎで、「サブベースは1BAにしては出ている」という表現になると思います。

使用したDAC

 HIDIZS DH80S ポータブルアンプとたまにFiio BTR13を使っています。DH80Sはミドルゲイン。BTR13はPCモードハイゲインで使用しています。ローゲインでも大丈夫な感じです。

どちらも充電式。4.4mmバランス接続可能なDACアンプです。

 DH80Sはハイゲインにすると100Ω-600Ωのヘッドホンインピーダンスに対応できます。発売開始から年月が経っていますが、手が出しやすい価格で4.4mmバラン接続ができて高出力。奥行きと左右上に空間の広がりを感じます。サイズは雑な採寸ですが横58mm x 高さ70mm x 厚み12mm。イヤホンだけでなくヘッドホン趣味もあるなら良い製品と思います。

 BTR13にはPCモードと言って、USB接続しているPCから電力を受け取りながらより高出力できるモードが有ります。そのモードで使用しています。DH80Sより透明度が上がる印象です。
 BTRシリーズはBluetoothレシーバーとして使用することも出来るので、その機能で有名な製品です。BTR13はBTRシリーズの中では音質追求は欲張らず、機能面では欲張った製品です。出来ることの割には値段が安いオススメ製品です。BTRシリーズで音質追求するならBTR17を選ぶ人が多いようです。

 FRONTIERは音質を求めるなら、ゲイン調整ができるレベルのDACは欲しいです。ハイゲイン必須ということではなくて、ローゲインでPC・スマホ側でボリュームを上げる感じでもよかったです。
 安価な変換コネクター型DACではないものを選ぶのが良いです。音量は直差しでも取れます。でも、艶がなく無彩色なパワー不足なモニターサウンドに寄ってしまいます。DACを使うとBAにしては艶と色付けされた空間になり聴き応えを感じます。

良い点

  • 装着感が良い。
  • キラキラした見た目。
  • 低音も出ていて高音域から低音域までバランスが良い。
  • 女性ボーカルを気持ちよく聞ける
  • 解像度高めで音を聞き分けやすい。

イマイチな点

  • 宣伝に煽られた人には低音は物足りないかも
  • 男性ボーカルは存在感が薄くなる
  • 音の傾向からして、万能型ではない

どんな人におすすめ?

オススメ出来る人

  • QDCのBAドライバイヤホンの音を、できるだけ安い価格で体験したい人
  • ダイナミックドライバ派だけど最新のBAドライバの実力を体験したい人
  • 装着感が良いイヤホンが欲しい人
  • キラキラした見た目のイヤホンが欲しい人
  • 繊細な鳴り方を好む人
  • DAC、DAPにすでにお金をかけている人(これから購入する気がある人)
  • この5年くらいの新曲を中心に聞く人

オススメ出来ないかも

  • ウォームな音が好きな人
  • 深く沈む低音を好む人(低音は出ているけど沈み込む感じではない)
  • スマホ、PCに直差し(オーディオ用ではない変換ケーブル)で使用する人
  • 古い音源を聞く人
  • イヤホンに5万、10万は出せる人

私が買ってよかったと感じたポイント

 少し変わったオススの仕方にはなりますが、改良されたBAドライバを体験するためのイヤホンと感じました。なのでダイナミックドライバ派だけど最新のBAドライバの実力を体験したい人にも積極的に試聴してもらいたいと感じました。多ドライバより1BAのほうがドライバのことが分かりやすいと思います。

 この場合は、物よりも体験にお金を払う感じです。旅行という体験。新BAドライバで色んな曲を聞く体験

 音だけに注目すれば、価格を上げれば良い製品は他にもあります。いい体験だったと感じることが出来たかどうか。物なので1回体験したら終わりではありません。使い続ければ、その体験は続いていきます。私はメーカの努力と工夫を体験する事が出来たと感じましたし、これからもこのイヤホンで色んな曲を聞いていきたいと思っています。この点で買ってよかったと感じています。

 この記事にたどり着くほとんどの人は、「こいつ何言ってるんだ?」「オーディオなんだから音の善し悪し以外に金を出し理由はないだろう」って思っているでしょう。でも、ガジェットが好きな人だったら、メーカーの技術の進歩を体験したいからお金を払う感覚は分かっていただけるんじゃないでしょうか。

さいごに

 褒めたい人は「1BAとは思えないくらいXXです」と言い、褒める必要がない人は「1BA同士で比べるとXXです」と言う。そんなイヤホンだと思いました。
 見た目も音質も、べた褒めするほどでは無いと感じます。
 しかし、BAドライバの音が好きな人は、積極的に購入の選択肢に入れるべき良いイヤホンだと思います。
 QDCのBAドライバイヤホンの音を、できるだけ安い価格で体験したい人には特にオススメします。
 平成終盤から令和の新曲で女性ボーカル物を聞く人にも聞いてみてほしいイヤホンです。

 1つ上の項目で書いたように、ダイナミックドライバ派だけど最新のBAドライバの実力を体験したい人にも積極的に試聴してもらいたいと感じました。

 1BAの音はこんな感じだろう?という過去の体験からくる決めつけは捨てなければならないと感じました。そして1BAでこれなら、QDCのマルチドライバはどれだけ素晴らしい音なんだろうかと興味が出てきます。すっかりメーカーと代理店の罠にハマってしまったようです。

リンク

FRONTIER|qdc|株式会社アユート PCパーツ・VR・オーディオ等周辺機器 総合代理店